マルチグリッド法

数値解析 手法の代表的手法のひとつに有限要素法があります。この方法では、最終的に大規模な連立方程式を解く必要があり、解析時間の大部分 はこの計算に費やされます。この連立方程式の係数行列が大規模で疎行列(ほとんどの成分が零である行列)となります。従来、この連立方程式の解法には前処理付き共役勾配法の一種であるICCG(Incomplete Cholesky Conjugate Gradient Method )法が広く使われてきました。これ は,ICCG法が他の反復法に比べて収束性がよく、また種々のパラメータ変動に対してロバストだからです。近年、この連立方程式の解法としてマルチグリッド法が注目されています。マルチグリッド法は連立方程式の未知数nに対してo(n)で 計算できることが知られています。そのため解析の規模が大きくなればなるほど、ICCG法よりも高速に解くことができ、将来、非常に有力な解法となる可能性があります。

そ の計算 方法の概略を説明すると以下のようになります。まず、粗密の異なる複数のメッシュを用意します。これをマルチグリッド法の中でも特に幾何マルチグリッドと 呼びます。そして、一番細かいメッシュに対する連立 方程式をガウスザイデル法等の反復解法を用いて解を求めます。その際、解が収束するまで反復を行うのではなく、数回〜数十回程度反復計算したところで計算 を 打ち切り、近似解を得ます。ガウスザイデル法には、誤差の空間的高周波成分が反復の初期段階で速やかに収束する一方、低周波成分の収束は非常に遅い性質が あります。従って、数回の反復計算で打ち切って得られた近似解に含まれる誤差は低周波成分のみとなります。このことからこの反復計算を数回行う操作をSmoothing と呼んでおり、Smoothingに用いられるガウスザイデル法等の反復解法をSmootherと呼びます。つぎにSmoothingで得られた近似解 に対する残差を粗いメッシュに投影します。細かいメッシュからみると低周波に見える誤差も粗いメッシュから見ると高周波に見えるので、粗いメッシュ上に対 して同様にSmoothingを行えば、残った誤差を速やかに取り除くことが出来ます。以上がマルチグリッド法の基本的なアイディアです。この説明からも わかるようにマルチグリッド法にはSmootherに用いる反復解法の選び方やその反復回数、複数のメッシュの生成方法等により、様々なバリエーションを考えることができます。
マルチグリッド法の基本的アイディア